■ズーノーシス  担当:南場裕児


 人を含めて脊椎動物すべてにかかる病気のことを「ズーノーシス」(人獣共通感染症、あるいは人畜共通伝染病)
といいます。ここでは犬と猫のズーノーシスについて見て行きたいとおもいます。
 
恐ろしい狂犬病
狂犬病は日本ではもう何年も発症は報告されていませんが、犬でもネコでも人間でも、狂犬病ウイルスに感染し、
発症すれば、死亡してしまいます。
イヌ、さらにスカンクやアライグマ、コウモリなどが感染源となります。
狂犬病ウイルスに感染した動物に咬まれることで感染します。
感染動物に傷口やその周辺をなめられたり、感染動物の唾液が粘膜について感染することもあります。
特別な治療法はなく、日本では狂犬病予防法によって生後3ヶ月以降のイヌは毎年1回、
狂犬病ワクチンの接種を受けることが義務づけられています。

犬のズーノーシス
犬にかかわるズーノーシスで注意すべきものにレプトスピラ症があります。
これはレプトスピラに感染したネズミや犬、家畜の尿などを媒介して人と動物に、感染します。
発熱、嘔吐、歯茎からの出血、血尿などになります。通常、野山などで愛犬を遊ばせて感染するのが一般的ですが、
レプトスピラを予防する混合ワクチンをきちんと接種していれば問題ありません。
 野外をかけまわる犬やネコの体に付着して家庭内に入ってくるものに、水虫で知られる白癬(はくせん)菌がいます。
水虫退治で苦労する人はよくご存じのとおり、白癬菌は感染力が非常に強く、捨てネコを拾って可愛がっていると、
あっという間に家族全員に感染することもあります。
また皮製の首輪などをつけたまま、愛犬の体を洗っていると、湿った首輪の周辺に白癬菌がはびこったりします。
通院して治っても、室内の掃除が不十分だと、残存する菌の胞子から再発することも少なくありません。

猫のズーノーシス
ネコにかかわるズーノーシスでめだつのは、バルトネラ症(ネコ引っかき病)です。
病原体のいるネコや犬に引っかかれたり、咬まれたり、なめられたところから感染し、患部が赤くはれたり、
膿んだりすることがありますがしばらくすると自然に治ります。 また、ネコ引っかき病をおこすネコには、
ノミがたくさん寄生していて、それらのノミが病原体を運んでくることも多いのです。
ノミの駆除、そしてネコの爪切りなどを定期的に行い、ネコも室内も清潔に保つことが大切です。
同じように、ネコや犬に引っかかれたり、咬まれたりして感染するズーノーシスで、より悪性なのが、
パスツレラ菌を病原体とする「パスツレラ症」です。この細菌が体内に入ると、わずか数時間以内に傷口が赤く腫れ、
ズキズキと痛みだします。また、呼吸器系の疾患、骨髄炎や外耳炎などの局所感染症、敗血症や髄膜炎、
お年寄りや糖尿病患者など、抵抗力の弱い人などが発症する「日和見感染」が多くみられます。
イヌの約75%、ネコのほぼ100%が口腔内常在菌として病原体を保有しています。 
ふだんから歯磨きの習慣を身につけていることが予防の第一歩。感染したイヌやネコに咬まれたり、ひっかかれたり
することや、ペットに口移しでエサを与えるなど、過剰なスキンシップによって感染します。
そして、万一、引っかかれたり、咬まれたりすれば、たとえ小さな傷でも、丁寧に水洗いし、消毒すべきです。

現在、犬やネコは家族の一員として家庭の中に迎えられ、人間と同じ生活環境で暮らす時代になりました。
だからこそ注意すべきことはいくつもあります。散歩や外歩きから帰ってきた犬やネコの体の汚れを取るために
ブラッシングし、足を洗う。あるいはケガやノミ、ダニの類が付着していないかどうかチェックし、歯磨きをするなど、
家族同等の身だしなみ、健康管理を守ること。またいくら家族同等といっても、食生活や就寝、排泄などの
生活習慣は人と犬・ネコとの区別をきちんとつけること。そして同じ食べ物を与えない、同じ食器を使わない、
同じタオルを使わない、同じ寝具で眠らない、遊んだあとは必ず手を洗うなど、人と動物が快適で安全、
安心な暮らしを保つための努力を積み重ねることが、ズーノーシスから人と動物を守る基本といえます。


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