■刑務所におけるアニマルセラピー  担当:中村友美

アメリカの女子刑務所では、受刑者がシェルターから引き取られた犬を介助犬やセラピー犬に育てる、
介助犬育成プログラムが行われています。受刑者は給料をもらい、毎日定時に出勤して仕事をこなします。

・ 介助犬育成プログラムを行っている刑務所:
   ワシントン州の最重警備女子刑務所
  「ワシントン・コレクションズ・センター・フォー・ウィメン」
   (Washington Corrections Center for Women)

・ 介助犬育成プログラムの名前:
  「プリズン・ペット・パートナーシップ・プログラム」
   (Prison Pet Partnership Program)

・ プログラムの歴史
1982年 修道女のキャシー・クイン(シスター・ポーリーン)の考えにより、プログラム開始。
1994年 非営利団体(NPO)として独立。
より幅広い活動が展開できるようになり、設立以来500頭以上の介助犬・セラピー犬を送り出してきました。

・ プログラムについて
    アニマルシェルターから介助犬としての適正がありそうな犬を見つけて訓練します(6~8ヶ月間)。
プログラムに所属する受刑者1人に1頭の犬が与えられ、訓練中は一日中犬と一緒に過ごします。
シェルターから引き取られた犬のうち介助犬になれるのは15~20頭に1頭で、
その他はセラピー犬となって老人ホームや心身障害者施設に引き取られたり、ペットになったりします。
    また、行き場のない犬たちを、1頭でも多くアニマルシェルターから救い出す手伝いをすることも
プログラムの活動の一つです。

・・・新たな飼い主を見つけられるように、問題行動のある犬を預かって訓練します。
・・・汚れて見栄えの悪い犬を刑務所内の美容室でお風呂に入れたり、毛をカットしたりしてきれいな姿にします。

   こうしてきれいな姿にしてシェルターに戻すと、犬の引き取り手が見つかる確率が、
5割前後から8割に増加します。一方、出所後にグルーマーとして就職を目指す受刑者にとっては、
資格をとるのに貴重な練習の機会になります。            
・ 刑務所で行う理由
→犬と接することで受刑者たちの心のバリアが取り除かれ、社会復帰への一歩を踏み出せます。
→病気や障害を持つ人のために介助犬を訓練することで、生きる目的をみつけられます。
→出所後に仕事について、経済的に自立するための職業訓練の場にもなります。

・ 受刑者の感想
アニラスという介助犬を育てた受刑者の感想
「ただただ、嬉しかった。誇らしかった…
刑務所にきてからそれまで、私は生きているとは言えなかった…。縫製工場では、一日十時間働いて、
そのうえさらに残業があるとありがたかった。とにかく早く時間が過ぎることだけを願っていたから…。
でも、心は麻痺して、何も感じられなかったの。
アニラスに出会ってからよ、もう一度生き始めたのは…。
アニラスは、私でも誰かの役に立てることを教えてくれた。
人の命を奪ったこの私が、社会に何かをお返しできることを。
…それからなの、自分のなかで癒しが始まったと感じられたのは…。
自分自身を、ほんの少しずつ肯定できるようになっていった。
それまでは、そうしてはいけないと自分自身に言い聞かせてきたわ。
でもアニラスとこのプログラムが、それを許してくれたのよ…」




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