■外来生物法  

2004年5月、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」が成立しました。
この法律では、外来種のうち、生態系や人への被害の発生度が極めて高いと見なされる種を政令で指定し、
その種の飼養、輸入等について必要な規制を行います。野外等に存する場合は、防除等の対策をこうじます。
特定外来生物による生態系、人の生命若しくは身体又は農林水産業に係る被害を防止することを目的とします。

特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律
法律全文 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16HO078.html
法律の概要図 [PDF 32KB] http://www.env.go.jp/nature/intro/gairaihou_gaiyou.pdf

外来生物とは、人間によって意図的、非意図的に関わらず、
もともと自然状態では生息していない地域に持ち込まれ、自然に分布した動植物です。

あらゆる生き物はそれぞれに、長い時間をかけて、様々な世界に馴染む努力を重ね、環境を拡大し、種の数を
増やしてきました。この長い歴史の中で、生態系は形作られてきたのです。外部からの生物が侵入すると、
生態系に何らかの影響が生じます。影響が大きい場合は、生態系全体の破壊を招きかねません。
新しい土地に連れて来られた動物は、そのすべてが新しい環境に適応し、定着するわけではありません。
実際には、気候が合わなかったり、適当な場所を見つけられなかったり、在来種との競争に敗れて世代交代が
続かない場合がほとんどです。定着し、その生態系に大きな影響を及ぼすのは、全体の約1%程度であると
言われています。かつてのように人間の移動能力が限られた時代であれば、生態系は何とか持ちこたえられるのでしょう。
現在は、国際貿易の拡大に伴って侵入のペースが加速度的に速くなってきています。
そのため、外来種の数は大きくなり、その影響は、棲息地の破壊についで、生物の絶滅の大きな要因になっています。

侵入要因
外来種が持ち込まれる要因には、大きく分けて5つに分類できると思われます。
@ マングースのように天敵の駆除の為。
A ペットの野生化。マングースに捕食されることがあるアマミノクロウサギは、ノネコにも襲われていることが知られています。
B ブラックバスのような、娯楽目的。
C 家畜の野生化。
D 昆虫、植物、ネズミなどのように、非意図的に物資に紛れ込んでしまう場合。

古帰化生物
そもそも外来種は、さかのぼれば有史以前から存在します。ヨモギ、ヒガンバナ、ナズナ、フジバカマなどは
イネの伝来とともに日本に持ち込まれました。このような古い時代の帰化種を古帰化種と呼びます。
古帰化であるかないかの区別は、明治時代を境にすることが多いです。戦後からを区別している場合もあります。
ビオトープにおいて、帰化種が確認されると、その駆除に躍起になることもあります。
悪影響の大きさから、駆除に対する優先順位を設けることもあります。
アメリカザリガニなどは、すでに「日本の市民権」を得ているという人があるが、日本の自然に良い影響を与えているわけではありません。
水田は、外来種であるイネを手厚く管理しているビオトープといえるでしょう。
米を栽培する目的で、日本の在来種を人為的に駆逐して開拓した人工空間です。
しかし、イネは駆除対象にはなりません。価値があるものなら外来種でも積極的に活用するということでしょう。
この点は、ブラックバスを釣り魚として大切にしたい人がいることと本質的な違いはありません。
どちらの場合も生物の多様性を変えている点でも同じです。しかし、周辺への悪影響の違いに大きな違いがあります。
イネは田んぼからほとんど移出しませんが、ブラックバスは移出先でも小魚などを捕食するからです。
アメリカザリガニはだめで、古帰化種なら良いという論は、本質ではおかしいですが、大昔の外来種まで問題にし、
駆除する必要はないでしょう。また、侵入した時期によって問題か問題でないかの線を引くよりも、
生態系への影響大きさにより線を引く方が、外来種の問題に対応しているように思えます。
歴史的には多くの外来種を盛んに活用しているということが、現在の外来種問題への認識を低下させている
と言う点で問題でしょう。

対策
まずは、外来種をつくらないこと。持ち込まないことと、野生化させないことが重要だと考えます。
輸出入に際しての、検疫体制の強化と審査体制の確立が進められています。
また、ペットの終生飼育は我々にできる最も身近な対策です。
既に定着してしまった問題となる外来種に対しては、生態系からの根絶が原則であるとの見方が強いようです。
しかし、実際には根絶は不可能な場合が多いです。捕獲、処分をしていかなければ成らないことと同時に、
共存の道は無いのか研究を進めていく必要もあるでしょう。

動物愛護
動物愛護の立場にたち、捕獲・処分される移入種を人道的に取り扱うのは当然ですが、
移入種の根絶と、個体に対する扱いは別次元の問題であることを忘れてはなりません。

外来生物は、外来種・移入種・帰化種など人によって様々な呼び方があるようです。
詳しく調べてみたい方は、こういった名前でも調べてみましょう!




参考文献
 羽山伸一、(2001)「野生動物問題」地人書館
 日本林業技術協会、(2003)「森野野生動物に学ぶ101のヒント」東京書籍
 WRI,UNEP,UNDP,The world bank、(1998)「世界の資源と環境1998−99」中央法規出版
  (文:動物応用科学科2年 鷲見さゆみ)

野生動物班(16名)
獣医学科3年 水澤哲也
動物応用科学科3年 椎名歩・若生宏美
獣医学科2年 浅井久美子・添田琴恵
萩本篤毅・藤本赳彰
動物応用科学科2年 鷲見さゆみ
獣医学科1年 吉田志織
動物応用科学科1年 岩原由実・田中かおり
南保麻里奈・藤沢希
堀香織・吉田倫子
環境政策学科1年 加藤ひとみ



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