■教育現場における動物実験代替法  担当:吉田恵理子

 ある年1年間の統計だけで、900万匹のカエルが解剖実習の目的で供給・使用されていました。
教材として使用されるカエルの大多数が野生由来であるため、自然生態系へ与えるダメージも無視できません。
近年、欧米を中心に、教育における動物実験の正当性に関する議論が活発に繰り広げられてきました。
その結果、代替法の採用と普及が図られています。
教育における動物実験はもっとも削減・廃止が可能な分野だといわれています。教育における動物使用については
大きく3つに分類できます。

1、小・中・高等学校における「理科」「生物」の授業での解剖・動物実験
2、基礎科学分野における動物実験(解剖学・生理学・薬理学・毒性学・生化学・微生物学など)
3、臨床系におけるトレーニング、技術習得のための動物使用(医学部・獣医学部・技術者養成など)

 教育現場における動物実験代替法とは、「生きている健康な動物を傷つけたり殺したりしないで学習する方法」
のことで、『全く動物を使用しない方法』と『倫理的に納得のいく範囲で動物(生体または死体)をしようする方法』
の二つに大別できます。

 『全く動物を使用しない主な方法』
   1、コンピューター・シュミレーション
   2、モデル・マネキン・シュミレーター
   3、視聴覚機材(ビデオ・フィルムなど)

 『動物(生体または死体)をしようする主な方法』
   4、死体の使用
   5、臨床実習
   6、Humane Society Program

*全く動物を使用しない方法について
1、コンピューター・シュミレーション
簡便であり、学生が自分のペースで学習することが可能。
2、モデル・マネキン・シュミレーター
主に、手技訓練、技術取得などの目的で開発されたものが多くあります。
立体構造を確認するために開発された模型なども含まれます。


3、視聴覚機材(ビデオ・フィルムなど)
実習における代替法で最も古くから存在します。実習の方法としては受動的である印象が強いですが、
学習の知識を深め確認するのに適切な手段といえます。

*コンピューター、視聴覚機材を使った代替法の利点として
  ・自分のペースで学習が可能
  ・何度も繰り返し行うことが可能
  ・本来の目的に集中できる
 ・時間が短縮できる
  などがあげられます。

*動物(生体または死体)を使用する方法について
4、死体の使用
死んだ動物なら全て許容されるわけではなく、倫理的死体であることが条件としている学校も多いです。
倫理的死体とは「医学的理由によりやむ終えず安楽死させられた死体」「病気や事故が直接の死因である死体」など。
6、Humane Society Program
現在ほとんどのアメリカの獣医大学が実習の一項目として採択している制度。
これは、地域のアニマル・シェルターとの共同プログラムで、シェルターに収容されている犬・猫に、
外科医スタッフの監督の下で不妊手術や虚勢手術を行うものです。

*新しい代替法について
 初等教育では、上記のような規制の代替法に加えて、野生の動物や植物を観察するという方法もあります。
それは動物を教室に持ち込む代わりに、生徒を動物の本来の住まいである外の自然の中に連れて行くという考えからです。

*代替法の導入について
○学校側のカリキュラムとして、学部の必修科目から動物の犠牲を伴う実験やトレーニングを完全に排除する
   例えば、ペンシルバニア大学獣医学部では、93年の時点で、完全な代替法への置き換えが可能となっています。
また、アメリカの医科大学(126校)でも85校の学校が完全にカリキュラムから動物実験を外しています。
(2001年)フィンランドのずべての医学部においても、強制される動物実験はなくなっています。
オランダ、イギリスなどでも同じようなカリキュラムが制定されています。
   このように、入学から卒業までの間に全学生が動物を全く犠牲にせず代替法で実習することが
可能となっている大学が存在するのです。
○ 科目によって、全面的に代替法を取り入れる


○生徒個人が動物の犠牲を伴う実習に直面した場合、代替法を要望し選択する
   ヨーロッパにおいては、学生が個人の意思で動物を殺す実習を拒否し、代替法を選択することが、
法律上可能な国が多いです(特にEU加盟国)。ただし、代替法を選択することが容易か否かは国や学校など
により違うので一概に言うことはできません。


このように、欧米や豪州では個人の思想や信条などを尊重する傾向にあることから、
「動物実験を拒否する」ことについても、「学生個人の権利」として認められることが多いです。


日本における大学教育では、学校あるいは教官の意向によって、実習に用いる動物の数の削減、
実習プログラム内容の改善、動物の苦痛の除去などが図られているようですが、
代替法の導入を強く推し進めていく動きは、現時点ではあまり見られません。
また、社会的背景や大学の体制、あるいは国民性の違いなどにより、日本では、学生が内部で声を挙げることは、
海外、特に欧米に比較し、困難であることが考えられます。しかし、欧米諸国で、獣医学での生体解剖を廃止に
持ち込んだのは、学生たちでした。
日本でも、学生自らが声をあげ、無駄な死をこれ以上増やしてはいけないと思います。


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