■聴導犬について 担当:佐藤祥・西野杏莉紗
1. 聴導犬とは
耳の不自由な方達や一人暮らしのお年よりの方と生活を共にし、耳代わりとなる犬のことです。
聴導犬は1966年、アメリカで誕生しました。
日本では、1981年から聴導犬の育成が始まりました。
現在、10頭の聴導犬が活躍しています。聴導犬は、特定の犬種の必要がなく、
純血犬でも、雑種犬でもいいのです。
日本聴導犬協会の聴導犬の候補生たちはみな、保健所などで保護された犬を選んでいます。
2. 聴導犬の歴史
1966年、アメリカで聴覚障害者の娘を持つ両親が、その娘が一人暮らしを望んだことから、
飼い犬に音を教える訓練をトレーナーに依頼した。これが「聴導犬」な始まりです。
親の愛から生まれた聴導犬の試みは、四半世紀が過ぎたアメリカで、
30以上もの育成団体から4000頭以上が輩出され、1982年から育成がスタートした
英国ではたった一つの団体から900頭以上貸与されました。そのニーズは高まる一方といわれています。
3. 聴導犬の適性
@ 健全で陽気な性格であり、動物や人に対して友好的で臆病でないこと
A 人と一緒にいることを好むこと
B ほかの動物に対して強い興味を示さず、挑発的な行動をしないこと
C 攻撃的でなく、過剰な支配的性質を有しないこと
D 環境の変化に神経質でなく、落ち着いていられること
E 平均的な触覚、聴覚および感受性を有していること
F 集中力と聴導動作への積極性および環境への順応力があること
G 乗り物酔いがないこと
4. 主な仕事内容
聴導犬が知らせる音は、大きく分けて4つになります。
@ 日常生活で必要な音:ドアベル、ファックスの受信音、料理タイマー、目覚まし時計
A 家族間のコミュニケーション:家族同士で呼び合う、幼児や赤ん坊の泣き声など
B ユーザーの安全を保つ音:笛吹きやかん、煙報知器、ホテル等でのドアノック
C 自宅外の音:銀行等での順番待ち、ホテルや公衆トイレでのドアノック、各種警報機
音の知らせ方の例
料理タイマーがなる→ ユーザーの所へ行く→前足でユーザーの身体にタッチ→
ユーザーがタッチに気づく→「何?」ユーザーが両手を広げる→音の場所へ連れて行く
※ただし、警報機の時だけは、音の場所に連れて行くと危険な場合もあるので、
足元に伏せをするように訓練を受けています。
5、訓練内容
基本訓練
基本訓練とは、犬に対する基本的なレベルの訓練をいう。実働日数として60日間以上行うこと。
訓練においては、訓練者の声による指示だけでなく手などの合図でも確実に従うよう訓練する必要があるので、
基礎訓練の実働日数は候補犬の状況に合わせて柔軟に設定する必要がある。
なお、聴導犬については、介助犬等と異なり動物保護管理センター等で保護された犬などの中から
適性のある犬候補犬として訓練するケースが多いことから、人に対する信頼感の醸成、
また、社会性を身につけさせるための訓練について考慮する必要がある。
↓
聴導動作訓練
聴導動作訓練とは、聴覚障害者の日常生活に必要な音に適切に対応する動作訓練をいう。
実働日数として100日間以上行うこと。ただし、基礎訓練と並行して実施して差し支えない。
そして、使用者と候犬との適合評価をできるだけ早期に行うこと。
↓
合同訓練
合同訓練とは、使用者本人が犬に指示をして、基礎動作および聴導動作を適切に行わせる
ことができるようにする適合訓練をいう。実働日数として10日間以上行うこと。
最終段階では、使用者の自宅、職場または学校において5日間以上行うこと。
↓
継続的な訓練・指導
聴導犬使用者の障害やニーズの変化あるいは環境の変化等に対応するため、
犬の引き渡し後においても継続的な訓練および指導を行うこと。最低1年に1回は、
使用者から報告を求めるとともに、必要に応じて自宅訪問する等により継続的な指導を行うこと。
6. 今後の日本での聴導犬の行方
聴導犬の育成では世界で一番成功している英国。
日本で聴導犬育成よりも1年遅く1982年にスタートした英国では、
たった一つの団体から現在900頭以上が働いています。
日本では、残念ながら、1981年から育成は始まりましたが、
この20年間で5つの団体から育成された聴導犬の数は20数頭。
寿命や諸所の事情でのリタイヤもあるので、そのうち10頭が認定聴導犬として働くだけです。
育成開始時に、ロイヤル・デフ・ソサエティ(英国王室が支援する聴覚障害者障害者協会)と
育成団体が協力し、無料で貸与することから始まった英国の聴導犬協会と、
有料での売買から始まった日本では、スタートラインの使命感の相違が大きな差につながったのは、
いうまでもないことだと思います。
日本での聴導犬の普及を行っていくためには、聴導犬ユーザーたちの口から「聴導犬は素晴らしい」と
聴覚障害者の社会に訴えてもらうしかないと考えられています。
そのためには、ユーザーの必要性や夢の実現を育成団体側がともに考え、ともに努力していくことが必要です。
聴導犬の普及は、育成する側と遣う側との親密で誠意のある交流がなくては、なしえないことでしょう。
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