■講演会『安楽死、ペットロス』
 2004年2月26日(木)

 あなたはペットを飼っていますか?
もし大切なペットが苦しんでいたら
もし失ってしまったら
あなたはどうしますか?

 今回の講演会のテーマは「臨床における安楽死」、「ペットロス」です。
最近話題になっているこの問題を、この機会にご一緒に考えてみませんか?

  講師 - 小方 宗次 先生
       麻布大学獣医学部付属動物病院 小動物部門長


安楽死

。。。安楽死とは
   Euthanasia(安楽死)という言葉はギリシャ語のeu(good、良い)と thanatos(death、死)から
  由来している。
  安楽死とは苦痛無く生を終わらせることである。

   ・獣医師や動物収容施設は苦痛の最も少ない安楽死の方法をしようすべきである。
   ・動物に不安や恐怖を与えずに、できるだけ速やかに意識を失わせ、
    悼みを感じさせなくする。
   ・各動物種に対して用いられる種々の方法があり、それぞれに長所と短所があるが、
    実験の性質により最も適切な方法を選択すべきである。

。。。主な安楽死の方法
    動物病院などでの主な安楽死の方法
  →バンビツール酸誘導体
     中枢神経を抑制する作用があり、高濃度で呼吸中枢が機能を停止し、
     酸欠により心機能も停止する。
     安楽死を行うための量は麻酔量の約3倍である。
     この方法は特にイヌやネコ、ウサギ、サルを安楽死させるために薦められる。
     投与方法は静脈内であるが、小げっ歯類に使用する場合には腹腔内に投与しても差し支えない。

    保健所などでの主な安楽死の方法
  →二酸化炭素(非麻酔性のガス)
     CO2は安価で、非引火性、非爆発性で取扱者に対しても有害性は少ない。
     7.5%で知覚は消失し、60%で意識を消失する。
     安楽死のために用いるCO2の濃度は90%〜100%である。
     部屋内の空気が除去されるように工夫する。
     動物が意識を消失し、反応がなくなるまで十分な時間動物を部屋内に置くことが肝心である。
     動物は全ての生存兆候が消失するまで酸欠状態に置かなければならない。
     さもないと意識が回復するおそれがある。
     CO2は空気よりも重いのでエアーポケットに達するために
     頭を持ち上げない動物にのみ使用すべきである。
     ドライアイスを用いる場合には、動物が直接ドライアイスに触れないよう注意しなければならない。
     CO2は細胞の形態には変化を生じさせないが、生理学的にはおびただしい影響がある。
     生じた炭酸により上部呼吸器系がやや刺激される。
     CO2は鳥や猫、小型の犬などの小型実験動物では安楽死として受け入れられる方法である。
     新生児は酸素に対するヘモグロビンの親和性が高いため抵抗性を示し、
     死亡するまで15分以上かかることもある。
     CO2は両生類や爬虫類の安楽死には推奨できない。


ペットロス

。。。ペットロスとは
     直訳すると『ペットの喪失』となるが、実際には『愛する動物を失った飼い主の悲しみ』を表す。
    日本では、「たかがペットが死んだくらいで」という風潮がいまだ残ってるが、
    ペットロスは愛する動物を失ったことに対する正常な反応である。

。。。背景
     ・ペットの地位の変化
       →使役動物⇒愛玩動物⇒コンパニオン・アニマル(伴侶動物)
     ・現代の人間関係
       →ストレスが生じやすい社会
         人々が感じる孤独感、ストレスなどをペットが解消してくれる。
         核家族化、少子高齢化、一人住まいの増加などの家族形態の変化も
         ペットの地位向上に関係。

。。。症状
     ペットロスは病気ではないが、時として、精神科医やカウンセラーの助けが必要なほど
    重いペットロスに陥る人もいる。
    ただしその場合、大抵はペットロス以外の原因がある。(人間関係での過剰なストレスなど)
    また、子供が自立した後の高齢者などは、生活におけるペットの占める割合が大きいので
    重いペットロスになってしまう傾向がある。

。。。ペットロスから立ち直るために
     ペットの死から立ち直るまでの時間も人それぞれだ。
    周囲の目を気にして悲しみを表に出さずに、溜め込んでしまう人もいるが、
    これはより一層辛くなってしまう。
    まず、悲しむことは当然であるとして、感情を出すこと。
    これがあってはじめてペットの死を受け入れる準備が整う。
     ペットの死を受けいれるために、ペットのアルバムを作る、ペット宛ての手紙を書く、
    形見を作るなど、形として残るものを作るのは効果的である。
     死んでしまったが自分の心の中では生き続けていると思えるようになるまでは、
    新しいペットを迎えるべきではない。
    死んでしまったペットと比較して、悪い方向に向かうこともある。



講師プロフィール、タイムテーブル省略。
アンケートは別ページに掲載。


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